2009年11月30日 |
今回ご紹介するのは、「AARPブリティン」2009年9月号の定年退職に関する記事です。定年退職と言えば、60~65歳くらいが一般的でしょうが、アメリカでは、70歳、80歳、さらには90歳を過ぎても働く人が出始めているようです。どんな理由があるのでしょうか?
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アメリカの定年退職事情
― 辞めたくても、辞められない? ― |
エルマ・ピリアーニさんは92歳。長年勤めてきた国土安全保障省を今年7月に退職しました。「こんなに長く勤めることになるとは、思ってもみませんでした」と穏やかな口調で話す彼女は、67年前、フランクリン・ルーズベルト大統領時代の連邦政府で秘書として働き始め、他のどの職員よりも長く勤め上げました。大恐慌時代の経験から、常に金銭に対する不安があり、働かざるを得なかったと言います。
85歳のジャンヌ・フィリップスさんは、心臓発作を経験した今でも、できるだけ長く働きたいと考えています。理由はやはり金銭問題です。彼女が続けている高齢者センターの仕事がなくて、公的年金だけだったら、必要最低限の生活を続けることも難しいと言います。そこで、彼女は財布にニトログリセリンをしのばせ、週3回仕事に出かけて行くのです。「退職できるものなら、したいですよ。ゴルフやボーリングをしたり、美術館に行ったり、お芝居を観たりしてね。でも、そんなお金はないんですよ」と言います。
この2人のように、退職の青写真を考え直している60、70、80歳代、なかには90歳の人が、たくさんいます。年金や給付金を請求するアメリカ人の平均年齢は63.9歳ですが、多くが金銭的な理由で、その後も働き続けています。労働統計局の調査によれば、65歳以上で働く人の割合の増加スピードが、他のどの年代よりも速くなっています。
2000年と2008年を比較すると、65~69歳の労働者数は25%、70~74歳では32%、75~79歳では38%増加しています。さらに、80歳以上では67%増加し、50万人が働いています。(労働統計局)
これは、平均寿命の伸びに伴い、退職に対する国民の考え方が変わりつつあるためで、人口構造の変化が続く限り、この動きはしばらく続くのではないか、とアメリカの調査機関ピューリサーチセンターはまとめています。
働く理由の一つは、金銭的な理由です。平均寿命が伸び、老後の生活を支える収入が必要だからです。現在の定年制度は1940年以降に設定されたもので、その頃の平均寿命は、男性50代半ば、女性60代前半でした。
公的年金も、老後30年を支えることを前提に作られたものではありませんでした。そこで、年収と勤続年に基づく企業年金が広まりました。人々は、比較的若いときに退職し、釣り、ゴルフ、ガーデニングなどで毎日を過ごし、時には旅行に出かける悠々自適な暮らしを送るようになりました。
しかし、企業年金の減少、不十分な老後の蓄え、増え続ける医療費や借金により、一昔前の快適な老後生活は多くの人々にとって夢と消えつつあります。前述のピリアーニさんやフィリップスさんのように、長く働き続けることを望む人も出てきました。
「今後に目を向ければ、状況は今の80歳と全く違ってきますよ」と話すのは、AARP政策アドバイザーのサラ・リックス氏です。ボストン大学退職調査センターによると、1948~54年に生まれたブーマーの52%が、退職後に現在の生活水準を維持するのは難しい状況にあります。さらに、1955~64年生まれでは64%、1965~74年生まれでは71%と、ますます悪い状況になることが予測されています。
また、住宅などのローンは退職するときに完済するのが一般的でしたが、近年は退職時、または退職間近の労働者の多くが、ローンを残しています。これも、働き続ける理由の一つとなっています。
平均寿命が伸び続ければ、より長く働き続けなければならないのです。AARPのリックス氏は言います。「今後ますます多くの80代の人が働くようになるのは確実です。でも、皆いつかは引退したいと思っているのです」
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