2010年5月27日 |
「AARPマガジン」2010年3・4月号には、アメリカの高齢者の介護事情が載っています。長く続く不況と介護保険制度が、介護にも大きな影響を与えているようです。
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| 愛さえあれば? |
マサチューセッツ州に住むある夫婦は、結婚39年。2人の息子は成人し、夫婦それぞれが退職した後は、蓄えた貯金で旅行することを楽しみにしていた。しかし、その状況は一転する。
夫のアレックスが初期の認知症と診断され、早期退職を余儀なくされたのだ。妻のロベルタは、人に頼んで、夫を散歩に連れて行ってもらったり、昼食を用意してもらったりした。仕事の合間には自分でもたびたび夫に電話した。世話をお願いする人に払うお金は、月々1,000ドルにのぼった。
夫の認知症が悪化すると、デイケア・センターに預けなければならなくなった。仕事に行くときにセンターに送り届け、仕事帰りに夫を迎えに行く生活が1年半続いたが、夫の具合が急に悪くなり、入院することとなった。メディケア(65歳以上の高齢者を対象にした医療制度)が、入院費をカバーしてくれた。しかし、3ヶ月後、ほとんど歩けない状態であるにも関わらず、アレックスは退院させられることになった。
ロベルタは、慌ててあちこち電話をかけて、看護付きの介護施設を探し出し、夫を入所させた。しかし、ホッとしたのもつかの間だった。メディケアがカバーするのは、わずか100日。それ以降は、月額7,500ドルの支払いがのしかかって来たのだ。8ヶ月後、その他の費用も合わせて75,000ドルを支出したところで、株価が暴落。蓄えも半分になってしまった。
「本当に怖かったです。夫ばかりか、蓄えまでが消えてしまいそうで」と、ロベルタは言う。そこで、高齢者問題専門の弁護士に相談すると、たった一つの解決策が提示された。それは、『離婚』だった。夫と別れ、夫を貧困状態にすることで、アレックスはメディケイド(低所得者向け医療費補助制度)の資格を受けられるという。「私も相当落ち込みましたし、夫に申し訳なく思いました。でも、彼を助けられる方法は、他にはなかったのです…」
こうして、ロベルタが離婚したのは、44回目の結婚記念日の前日のことだった。しかし、これはこの夫婦だけが抱える問題ではない。アメリカでは多くの夫婦が、断腸の思いで離婚を選択しているのだ。
アメリカには2つの保険制度、メディケアとメディケイドがある。メディケアは、65歳以上の高齢者を対象としており、主に急性疾患への対応を目的 としているので、100日以上の介護やリハビリには対応していない。一方、メディケイドは、介護費用をカバーしているが、低所得者を対象としているので、2,000ドル以上の現金資産を持っていると受給資格が得られない。つまり、メディケイドの受給資格が得られるまで蓄えを使い切ってしまうと、残された妻や夫には何の蓄えもないのだ。
65歳以上のアメリカ人が介護施設に入所する可能性は40%で、平均入所期間は2年半、費用は約175,000ドルにのぼる。2008年には、65歳以上の900万人が長期介護を必要とし、2020年にその数は1200万人になると予測される。しかし、アメリカ人の10人に9人が年を取っても家にいたいと考えている。メディケイドは、高齢者が家で過ごすよりも、高額の介護施設に入ることにその資金の多くを使っているが、メディケアもメディケイドも高齢者が出来るだけ長く自分の家にいられるように力を入れるべきだと考えられている。
ロベルタは、離婚したことに心が痛んだが、「結婚は紙切れではない」と思うことで落ち着きを取り戻すことができた。夫への愛情に変わりはなく、毎日夫を見舞い、孫の様子を伝えている。「私には家もあるし、十分な蓄えもありますから、子どもの世話にならなくて大丈夫でしょう」。2人で過ごした時間と同様に、将来への安心も大切なのだ。
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