2011年1月31日 |
日本では高齢者の「孤独死」が大きな社会問題になっていますが、アメリカでも「孤独」な状態にある人は多いようです。孤独は、予想以上に健康に悪い影響を与えます。「AARPマガジン」2010年12月号からです。
|
| 慢性的孤独 |
AARPの調査によると、アメリカでは何百万人もの高齢者が慢性的な孤独を感じており、調査に参加した45歳以上3012人の35%が慢性的な孤独状態にある。10年前にUCLAが行った同様の調査の結果が20%だったことと比較すると、その数が増大していることがわかる。
人は誰でも、時として孤独になる。例えば、離婚や死別などの後に孤独を感じるのは、至って自然なことだ。これは、専門家が「状況的孤独」と呼ぶもので、確かに辛いが、一時的な孤独状態であり、「慢性的孤独」とは全く異なる。「慢性的孤独」とは、「常に孤独を感じ、孤独に終わりが見えない状態」である。「慢性的孤独」な人は人を遠ざけてしまうので、人間関係を通してもたらされる喜びを得ることがなくなってしまう。
しかし、「慢性的孤独」状態にある人は、単に不幸であるというだけでなく、危険でさえあるのだ。シカゴ大学のジョン・T・カシオポ博士は「孤独は、驚くほど広く深く健康に影響を与える」と言う。「慢性的孤独」は、糖尿病、睡眠、高血圧、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌、免疫力、アルツハイマー病などに悪影響を与えることが多く実証されている。
「慢性的孤独」は一度陥ってしまうと、抜け出すことが難しい。「結びつきを強く求めている人が、離婚や死別を経験したり、人間関係の構築に失敗すると、慢性的な孤独に陥る危険が非常に高くなる」と、『孤独の科学』*の著者でもあるカシオポ博士は言う。そのような辛い経験をすると、もっと辛い経験をするのではないかと恐れ、人と付き合うことが怖くなってしまうのだ。そして、「慢性的孤独」が与える強いストレスは、精神的・身体的犠牲を伴い、「孤独な人は惨めな生活を送り、早死にしてしまう傾向にある」(カシオポ博士)
孤独な人の増加は、4年前に出された「社会のネットワークが縮小している」という調査結果を裏付けている。大事な問題を話し合える人がいないという人が、1985年の10%から2004年の24%に増加、親しい友人が一人か二人しかいないという人も、31%から38%に増加している。これは、2007年に始まった経済不況、高齢者の一人暮らしの増加などが原因として考えられる。
しかし、一人暮らしの高齢者が、「慢性的孤独」であるわけではない。意外にも、孤独感が最も強いのは45-49歳で、43%が孤独を感じている。年齢が上がるにつれ孤独を感じる人の割合は減少し、70歳以上では25%になる。生活の満足度も年齢とともに上昇している。
働き盛りの世代の孤独感が強く、生活満足度が低いのは、労働環境によるものかもしれない。長時間労働、上がらない賃金、メールや携帯電話にしばられ、なかなか仕事から離れられない状況などが考えられる。「常に目の回るような忙しい状況」にあっては、なかなか人とつきあう時間も得られない。
「慢性的孤独」を避けるためには、どうしたらよいのか?
まず、退職後も仕事仲間と連絡を取り続けることだ。退職後も同僚と付き合っている人で孤独な人は16%、付き合っていない人で孤独な人の42%を大きく下回る。
古い友人と連絡を取るのにインターネットがよいと思うかもしれないが、インターネットは実際に顔を見ることの代わりにはならない。「数は少ないけれど、インターネットで深い付き合いをしている友人がいるから大丈夫」と言い訳する人がいるが、それは、空腹時にセロリを食べ続けているようなものだ。一時しのぎにはなるが、栄養はないので、結局はもっと空腹になってしまう。実際に会って話をすることが大切だ。
誰かとつながっているためには、ボランティアに参加することも効果的だ。1年間にボランティア活動した人で孤独な人は28%、しなかった人で孤独な人は40%である。また、読書やガーデニングなど何らかのサークル活動に所属している人で孤独な人は26%、所属していない人で孤独な人は39%である。定期的に人と会って一緒に活動することは、人間関係を深め、心の健康によいことが分かる。
*「孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか」 河出書房新社(2010年1月)
(Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection)
ジョン・T・カシオポ&ウィリアム・パトリック著 柴田裕之訳
|
|