2011年1月23日

シルバーズ・サミットから


「シルバーズ・サミット」カンファレンスから
201118日(土)

基調講演
8:30am–9:30a.m.
司会:ダン・マイケル(ダキムCEO
発表者:ゲーリー・スモール(カリフォルニア州立大学(UCLA)高齢化センター、医学博士)
  • アメリカの優れた脳神経科学者の一人である、UCLA大学のゲーリー・スモール博士は、「人とテクノロジーの関係を体験してみましょう」と講演を始めた。聴衆に向かって「自分の携帯電話の電源を入れてください。」と促す。「どう感じますか?」、「では今度は隣の人と自分の携帯を交換してみてください」、「どう感じますか?」、さらに「今度は携帯をもとに戻して、電源を切ってください。」、「何を感じましたか?」



講演するスモール博士(Dr. Gary Small M.D.


  • 博士は、「この体験で分かったように、携帯電話の電源を入れて安心、交換すると不安になり、電源を切るとちょっと不安になる。このように脳は瞬間、瞬間で変わるのです」と言う。人間には他の動物にはない思考を行う部分が脳の中にあり、人間特有と思われる“道具を使う”とか“言語を持つ”などに関係している。近年のデジタル技術の発達により、脳の発達は幼少時代からすでに刺激を受けているが、実は本を読んでいるときの脳の活性化部分とデジタルコンテンツを使っているときの脳の活性化部分が異なることが明らかになってきた。

  • 米国の8才から18才の若者は一日平均11.5時間ハイテク機器に接しているという調査結果があるが、デジタル・ネイティブといわれる所以である。テクノロジーの時代に生まれ、24時間情報にアクセスできる時代に生まれ、そのために直接顔をつきあわせるダイレクトな関係が少なくなっている。しかしこういった環境でも脳は、感情移入をするようになる、より複雑な推論をするようになる、などまだ進化していく。

  • このようにデジタルコンテンツを生まれた時から使っている世代を“デジタル・ネイティブ”世代と呼ぶとすると、50歳以上の世代はデジタルの時代にやってきた移民“デジタルイミグラント”と表現でき、二つの世代は脳の使い方が異なり、そこに世代ギャップが発生すると考えられる。

  • 「グーグル(Google)は我々を能なし(Stoopid:ooGoogleにかけている)にするのか?」というタイトルで、インターネットが我々の脳に及ぼす影響についての研究も進んでいると紹介する。本来コンピュータ、電子メール、インターネットは、人々がより創造的な考えをする時間を作り出すための物のはずだったが、皮肉なことに毎日の生活の速度が加速され、思考をして振り返る時間が少なくなってきているのが現実。

  • UCLAがインターネットの利用と脳の働きの影響を研究しているが、インターネット初心者と経験豊富な人では脳の活動が違うことが分かってきた。


ネットの初心者(ネットナイーブ)はインターネットでも従来の文章を読んでるときと同じような反応、
ネット経験豊富な人(ネットサビィー)はインターネットをしているとき脳が活発になる


  • 博士はまとめとして、「技術は我々の生活を変えるだけにはとどまらず、我々の脳も変えており、さらに将来も脳は変わって行く。新しいデジタル世代とのジェネレーションギャップというのは、実際は脳のギャップなのである。技術をよりよく改善し社会生活のスキルを作り、技術を使う時とそうでない時を知ることで、脳のギャップを埋め生活のバランスをつくることが大事だ」と締めくくった。


ブーマーは、なぜそれを買うのか?
9:30–10:30a.m
司会:スティーブン・ライリー(ビブラント・ネーションCEO
パネリスト:ケン・バロン(編集者)
       ロリ・ビター(コンティニュアム・クルー社長)
       マーク・ゴードン(ファーストストリート社長)
  • 42-63歳は所得が一番多く、家庭での支出の決定権を握っている。ブーマー世代は40歳以下に比べて、今まで使ってきたブランドを変えることに抵抗がない。ブーマーの消費行動を専門家が討論。

  • 米国の男性は、物を買うとき“機能と次のなにか新しいこと”に関心があり、女性は“何がよくなるのかという利便性やメリットと長く使えること”を大事に考えている。電子書籍キンドルを買った女性は25年はキンドルを使い続けるだろう、とエルダー市場に電子機器を販売する専門家が言う。

  • ビブラントネイションドットコム社は、全会員が女性で、48-68歳が83%をしめるブーマー世代の女性オンラインコミュニティーである。この世代は、宣伝・広告に影響されることなくライフステージを作り出している。オンラインンコミュニティーでの人とのつながりの情報から物を買う。さらにこの一年で電話の通話以外にスマートフォンを利用する人が昨年の25%から83%に一挙に跳ね上がり、映画もDVDを買うのではなくインターネット経由でダウンロードする人がDVDを買う人を抜いた。

  • ブーマー市場向けに的を絞った製品を販売するファーストストリート社は、購入者の80%がプレゼントではなく自分が使用するために買っていると分析。ブーマー市場には“欲しい物”と“必要な物”があるという。次の大きな市場機会は、介護をする人たちが必要とする物にあると予測する。製品の値付けも大事で、売れ筋は、49ドル、99ドル、499ドルの三つ。3Dテレビより、エルダーとのコミュニケーションを容易にする小さなカメラがつくテレビがなぜ簡単に実現出来ないのかと市場ニーズと業界のギャップを指摘する。



46歳から65歳は中年(ミッドライファー)だが
この年代が持っているブランドイメージと企業の商品のギャップもあるという


イライラするハイテク製品
10:30–11:30a.m.
司会:ジュンコ・ヨシダ(EETimes編集長)
パネリスト:ゲーリー・ケイ(コンペリグテリング代表)
       マレー・スロビック(インテリジェントテックコンテント)
       バド・マイヤー(シニアサーキット社長)
       ゲーリー・アレン(アレンコミュニケーション社長)
  • ハイテク製品は、見かけは良いがよくイライラさせられる。ハイテク製品評論家たちが展示会場で見つけたおもしろい製品を紹介し、シルバー世代の評論家達が評価した。

  • インターネットに接続するネットテレビ、携帯デジタルテレビ、タブレットなど新製品が出てきている。これからは、これらを見ている人が容易に操作できる技術、例えばジェスチャーや見ている人の目の動きを観察して作動する機器なども求められるだろう。しかしこういった機器には、画面や文字を少し大きくする、セキュリティー機能が複雑でなく一つのボタン操作で動く、といった配慮がもっと欲しい。

  • 最新の液晶技術を使い、頭の上下角度を自動的に読み取り、液晶で出来た眼鏡レンズの焦点を自動的に合わせることができる液晶メガネも出来た。4月発売で1200ドルと高価だが高齢者世代だけでなく、一般市場にも対応できる。センサーや携帯電話機能を内蔵した一人生活者のモニタリングサービス機器は、介護のコスト低減に役立つだろう。

  • もっと商機を増やすには、新たな利用者へのオリエンテーションや製品やサービスの改良修正をさらに継続的に行うことが必要だとパネリストは指摘する。



達者な話術で会場を沸かせる記者や評論家たち


ユニバーサルデザインでバリアフリー社会を作る
11:30–12:30p.m.
司会:ヘレナ・ミッチェル(先端コミュニケーション政策センター専務理事)
パネリスト:マイケル・メイ(センドロ・グループCEO
       マイケル・スターリング(ナショナルパブリックラジオCTO
       ジェイク・シーゲル(リビオラジオ創業者)
  • 身障者の立場から盲目であるマイク・メイ氏が登場して、自ら代表を務めるセンデロ・グループの活動について紹介した。センデロでは1993年にGPSを用いて位置をナビゲーションするシステムの開発に着手した。今はGPSを利用したソフトウェア製品や個人用携帯機器を利用できるよう、自分自身をモデルに身障者のニーズに合わせた製品の開発と販売を行っている。



自ら開発した製品を利用しながら登壇したマイク・メイ


  • リビオラジオは、昔のラジオのようなデザイン。大きなスピーカ-、右にあるラジオ局を選ぶダイヤル。実はこれがインターネット上のラジオ放送を聞くラジオ。インターネット上には16千局以上の無料ラジオ局があり、従来のラジオとまったくおなじ操作で、それを容易に選択でき「もっと音楽を、仕事は少なめに」楽しもうという商品なのである。



最新インターネット技術を伝統の箱にいれたリビオラジオの創業者


  • 実際障害を持つ人たちには使えない製品が多い。ハードウェヤやソフトウェアが使いにくく、活用できないテクノロジーもある。よりよいデザインと、バリアフリーへの取り組みがもっと必要である。ユニバーサルデザイン、すなわち障害者・高齢者に限らず誰にとっても使いやすい設計をすることはみんなが安心できる。チャンネルを変えると音の高さが変化するとか、ちょっとした工夫が日常生活に大きく役立つことが多い。


高齢者の健康とテクノロジー
1:00–2:00p.m
司会:リチャード・ミグリオリ(ユナイテッド・ヘルス・グループ副社長、医師)
パネリスト:ゲイル・ハント(ナショナル・アライアンス・ケアギバーズ社長)
       ロウリー・オローフ(エイジング・イン・プレイス・テクノロジ代表)
       デイビッド・リンダ-マン(テクノロジ-アンドエイジングセンター部長)
       アンディー・コーヘン(ケアリングコム社長)
  • 携帯電話やIT機器のテクノロジーの普及により、高齢者の健康の改善が期待されている。高齢者が独立・自立(インデペンデンス)を維持出来るようにすることと介護をしている家族の人達を支援するテクノロジーが最新のトレンドである。

  • 米国介護者連盟(NAC)はユナイテッドヘルスグループと共同で介護に最新テクノロジーを用いることの広範囲な調査を行った。1000人の介護担当者のアンケートを分析すると、個人の健康記録の追跡と管理、介護をする人のコーディネート、薬治の処方と管理を支援するシステムが介護に大きく貢献すると答えている。実際、時間の節約、物の運搬の効率、ストレスの減少などのメリットを明らかにもたらしている。さらに70%近い介護者がスマートフォンの利用に前向きである。一方、機器の価格がまだ高価であること、逆にどれだけ節約につながるのか効果が明らかでないなどの課題も指摘された。効果が明らかで、製品保証期間が3年なら使おうという人が多い、とNACは示唆している。

  • 実際アメリカでも「迫りくる介護の危機」である、とエイジングインプレイステクノロジー社がいう。一般的介護施設での生活費は年間36千ドルであるが、これが2015年には5千ドルを超え、さらに上昇と予測。さらにこういった介護施設で働く25-44才の女性が減少し、施設の受け入れ数が増えないと予測されるが、一方高齢者が増える。こういったことからも、介護を考えたエイジングインプレイス、住み慣れたところで老後をすごすことが主流になるだろう。

  • ケアリングドットコム社は、これを市場という観点から分析。何らかの介護に従事しなければならない人は5千万人に達し、これは結婚する人、新たに母親になる人の規模と比べると数倍になり、今後更に増えると見込まれ、大きな市場と指摘。特に、ブーマー世代が自分の親の介護をする“ファミリーケアギバー”は43百万人におよび、この市場に注目することが肝要である。このファミリーケアギバーは、7割以上の人達が両親の医療の方針に影響力をもち、日常の買い物を手伝っている。NACの調査でも、70%の人達が、介護問題の解決を探してインターネットを使い、53%がフェイスブックの利用者でもある。



NAC代表とユナイテッドヘルス代表が調査結果を紹介


スマートアウェアホームを作る
2:00-3:00p.m.
司会:ジョージ・パットン(シニア・ハウジング・ニュース編集長)
パネリスト:スチュアート・シークス(パークアソシエイツ社長)
       ライアン・マルリー(ジグビー・アライアンス部長)
       スキップ・ウェスト(マクサ・イノベーションズ社長)
       キップ・ミーチャム(クロスバイネットワークス副社長)
  • 高齢者のための家とは何か?QOLを高めるために、高齢者住宅は、最新のネットワークやハイテク機器とどのように結びついて行くのか?

  • 老人向け住居と生活を便利に自動化するというニーズは、一人暮らし(インデペンデントリビング)の人、住み慣れたところで老後をすごす(エイジング・イン・プレイス)、支援をうけながら過ごす施設(アシステッドリビング)や介護施設(ナーシングホーム)などから求められている。新築、改造、そして今家にある物と新しい物を統合する3つの形態で設計が行われている。

  • その基本は、ユニバーサルデザインで、アクセスが容易な設計と日常生活を支援するテクノロジーの導入である。例えば、熱センサー、自動ドア、自動的に薬が出る装置、そして気づかれないモニタリング。

  • パークアソシエイツ社の市場調査によると、緊急応答サービス、ついで転倒を検知するサービス、そしてビデオで家族や介護者と話が出来るサービスが欲しい物の上位を占めるが、こういったサービスにいくら払うかと問うと、高齢者は平均34ドル、介護する人は平均33ドルと答えた。同じ調査で、モニタリングサービスについては、住んでいるシニア世代は使ってもよいが9%、モニタリングされることに抵抗があるが、モニタリングする役割の子供たち等は使いたいが55%と必要と考えていることが分かった。モニタリングサービスは、高齢者の健康状態が良好であれば穏やかな監視システム、疾患重症度が増せば常時監視するアクティブなシステムが好まれると考えられた。しかし、興味はあるがコストが高いということになると実際に使用する意欲は低下する。モニタリングシステムとそのサービスは、個人の状況に対応できる多様性、そして安価でも信頼性の高さが必要である。



安全と安心に本当に役立つ革新的製品だと
いくつもの事例をあげて説明するマクサ・イノベーションズ社長


介護者のためのインテリジェント・システム
3:00–4:00p.m.
司会:デイビッド・リンダ-マン(テクノロジ-アンドエイジングセンター部長)
パネリスト:リチャード・ロボフスキー(ヒュー・テレマティックス副社長)
       フレッド・アレグレッザ(テリキンCEO
       チャールズ・ヒルマン(グランドケア・システムズCEO
       ステファン・アレックスロード(タブセイフ社長、医師)
  • 離れて住む両親を見守り、簡単に連絡を取りたい人が増えている。高齢者の自立を見守り、安全を確保しながら、高齢者が元気に暮らせるインテリジェントな製品の事例が紹介された。

  • パソコンではあるが、画面をタッチすることで、家庭の外とのビデオ会話、メール交換、家族の写真やビデオを楽しむテレビ型のコミュニケーション機器は、タッチパネルの使用で誰にでもわかりやすい導入画面と操作性の簡単さが特長である。

  • 米国では個人の緊急応答連絡システムをPERS(パース)と呼んでいる。モバイル・パースは、24時間身につけられる腕時計型で、携帯電話機能に加え今どこにいるかを示すGPS、転倒検知センサー、身体活動のモニタリング機能がついた小型機器である。

  • タブセイフは、家庭での薬の投薬を、薬局、家族、あるいは介護する人がプログラムすることができ、薬を飲むことを自動で指示し、さらに残っている薬の量を管理することが出来る。

  • ビーゴ(Vigo)は、画像と音声で家の外の家族とのコミュニケーションをとりやすくしたロボットのような機器(大人が座った高さにカメラが付いている)である。

  • このように老人に使いやすい機器の試みは終わることがない。現時点では、まだまだ改善が必要な機器が多いが、このような試作機から実用機への試みが、近い将来本当に使いやすい本当の実用機へ進んでいくことが容易に想像できる。



ハイビジョン高解像度のカメラ、4つのマイクロフォン、
2つのスピーカー、さらに足下にもスピーカーとセンサー を内蔵したビーゴ(Vigo


ふれあいカスタマーサービス
4:00–5:00p.m.
司会:ゲーリー・バーグ(トゥデーズ・ケアギバー編集長)
パネリスト:シャナ・デューシー(ナーチャーコネクトCEO)
     マーク・ゴードン(ファーストストリート社長)
     ジョン・マーリック(コンシューマー・セルラーCEO)
     ジェフ・ヒル(マイゲート社長)
  • 高齢者に愛されるビジネスの秘密は、カスタマーサービスにある。高齢のお客様の心をつかむテクニックと気配りを討論。

  • パソコンを高齢者に販売して11年になるというマイゲート社は完全で徹底した“コンプリートカスタマーサポート”が第一という。そうはいっても、パーフェクトということはなく、顧客の70%がサービスに満足していないとシニア向け製品販売のファーストストリート社が指摘。

  • 高齢者自らではなく、介護する人が実際に調べてこれがいいと推薦すると、8割の高齢者の家族が購入するというデータもある。

  • また、みんなインターネットになれてきて、製品の不具合やサービスの悪さをフェイスブックなどに書き込むことが増えている。CESにきているメーカーの人はお客の声を聞くことが第一だ。



いくつもの質問がでて、活発な質疑応答が続く


AgeTekアライアンス紹介
5:00–5:30p.m.
司会:ピーター・ラドスクリフ(プレスト・サービスCEO
パネリスト:ミシェル・オールマン(クリア・サウンド・コミュニケーションズ社長)
       シャナ・デューシー(ナーチャーコネクトCEO
       ローラ・ミッチェル(グランドケア部長)
  • 高齢化社会を迎え、今こそ、高齢者向けの製品やサービスを提供する企業が力を合わせるとき。

  • 先ごろ結成されたエイジテック・アライアンスの会長は、「ブーマー向けあるいは高齢者向け製品やサービスが多数出始めたが、高齢者であるとか介護をする立場の人達であるとか利用者の特性を考慮することが必要になってきた。エイジテック・アライアンスは、品質のガイドラインを示し、さらにその重要性をもっと広報していきたい」と、その目標を力強く話した。



エイジテック・アライアンス会長と3人の女性幹部





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