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もう一つの不都合な真実


2007年4月11日


 地球温暖化への警告のノンフィクション映画「不都合な真実:An Inconvenient Truth」を見に出かけた。私鉄の特急がとまる駅前にできたその映画館は、12年前に住んでいたアメリカの田舎町に出来たショッピングモールにつくられた映画館そのものであった。入り口からポップコーンのにおい、同時にいくつもの映画が上映される仕組み、飲み物を置くホルダーが肘掛けに付いた広い座席、最新の音響設備。

 『地球が、今、最大の危機に瀕している』とアル・ゴア元アメリカ副大統領は言う。キリマンジャロの雪が解け、北極の氷が融け崩れ、各地にハリケーンや台風の災害、などの様子が映し出される。『こうした異変はすべて地球の温暖化が原因といわれる。傷ついた地球を救うため、一体、今の私たちに何ができるのだろう?』と、彼は問う。


『不都合な真実から』アル・ゴア、元大統領候補(1)

全国地球温暖化防止活動推進センターから(2)

 『こどもの城においでよ』という東京渋谷の子供の城の隣にある国連大学で、アメリカ、日本、韓国、中国・香港、インド、オーストラリア、そしてニュージーランドから集った人達が議論したのは、「アジアの退職問題の再改革を考えよう」。そしてそれを主催したのは、世界最大のNGOと自称する会員数3千7百万人のアメリカの高齢者団体の組織AARP。二日間にわたり、アジア各国の高齢化、年金問題、健康保険制度や医療問題、さらには50歳以上の人達がもたらす市場機会を討議。最終日、AARPの政策と戦略担当者は、日本から「IKIGAI、生きがい」を学んだと総括した。


シニアに生き甲斐(IKIGAI)をと講演する高齢社会NGO連絡協議会共同代表 堀田力氏

 実際、温暖化以上に地球の高齢化は進んでいる。地球は、1950年に約25億人の人口で、その平均年齢は約24歳。50年後の2000年に、人口は約2.4倍の60億人を超え、その平均年齢は3才進んで27歳になった。さらにその50年後の2050年には、人口は90億人を超えると予想され、平均年齢も11才進んで、38歳に近づくと予想されているのである。


世界人口予測、国連2004年データからアップルグローヴ・ハウス社作成

 しかし、米国、欧州で一番人口の多いドイツ、世界人口一位の中国、2位のインド、お隣韓国と比べてもっと詳しく見てみると、その問題の大きさが浮き彫りになる


6ヶ国の人口予測、国連2004年データからアップルグローヴ・ハウス社作成

 今27歳の人が、50歳になる2030年、日本は65歳以上の人が総人口の約32%を占め、国民の平均年齢がなんと53歳になり、ドイツや韓国でも平均年齢47−48歳となる。中国での平均年齢も約42歳、米国も40歳に近くなる。さらに、2040年になると、出生率の低下で、日本、ドイツ、韓国、そして人口世界一の中国も人口低下が顕著になる。グローバル・エイジング、Global Aging、地球高齢化は、「もう一つの不都合な真実」なのである。

 2040年以降も総人口の増加が続くと予測されている米国では、45歳以上を「ブーマー」と呼んでいる。ブーマーは、人口7千7百万人、米国人口の28%を占め、約4千6百万世帯、全米金融資産の77%を占めその推定購買力は約250兆円と言う。


大半のアメリカ人は都会に住む、2040年までに1億人増えるが、住む所は?と贅沢な悩みの米国(3

 “年間2兆ドルの「ブーマー市場」で勝者になるためのヒントが盛りだくさん!本会議に参加し、「ブーマー市場」で利益を上げてみませんか?”と呼びかけるのは、2004年から始まったシリコンバレー・ブーマー・ベンチャー・サミット。45歳以上のブーマー市場“45プラスマーケット”へのイノベーション(革新)、投資、起業家精神、そしてその大きな事業機会を捉えていこうと言う企画である。

 「ブーマー市場」は、高齢化が何処の国でも起きているグローバルな事象であること、様々なイノベーションや最新技術で生活の質の向上が期待できること、長生きと言うことは、生活する財政基盤も長くて健康でなければならないことだ、と課題を整理。シルバーシートと言う言葉があったが、アメリカはこのブーマー世代を大きなビジネス機会、すなわち“ゴールド市場”にしようとしている。

 アメリカのベビー・ブーマーの関心事は、「@健康な生き方、Aヘルスケア、B家族と介護、C金融サービス、D住宅環境、E精神的なこと」の6つのトレンドで表される。アメリカでも60歳代が80歳代90歳代の親を介護する課題、年間平均1,200万円に及ぶ老人ホームの費用の問題があり、そして55%の祖父母が孫の教育の支援をしていると言う。

 そのサミットの企画の一つ、優れた事業計画には1万ドル(約120万円)の賞金をだす$10,000事業計画競争(ビジネスプランコンペ)も開催されている。2006年のコンテストでは、書類インタビューを経て残った75の計画の半分は、ビジネス経験を持つ中堅の起業家から、そして残りの半分はトップクラスの大学、ビジネススクール、医科系大学の学生からであるという。

 シリコンバレーの地元の著名なベンチャーキャピタリスト5人による最終選考は、アメリカには1200近いベンチャービジネスのコンペ(競争会)があるという説明で始まった。決勝に残った5社の事業計画のプレゼンテーションは、@事業機会があるか、A市場への展開戦略、B説明の明快さ・訴える力、Cマネージメントの質、の観点から評価された。


準決勝に進んだブーマービジネス(2006年)(4)


 グローバル化は、温暖化、高齢化、経済活動、インターネット、人の移動・・・留まる所がなくなった。高齢化問題でも、国際的政策で指導力を見せつけるAARPなどの民間団体、シリコンバレーに代表される分かりやすい言葉をもって目指す所を示し、アイデアを引きつけ、人材と資金を集め、いつの間にか世界中に進出するアメリカのビジネスが、先端を走っているように思える。

 高齢化の先端を走り、多様な個別技術や人材、さらに資金をもつ日本は、他の国からは、“高齢化のお手本となる国”と注目されているのだが、アメリカのようにグランド・ストラテジー(Grand Strategy:総合戦略)をもってこの事業機会に取り組まないと、ポップコーンを片手に映画を見るだけに終わってしまうかもしれない。


1)  www.futsugo.jpから、元副大統領だが、映画では「元大統領候補であった」と笑わせる。
2)  全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)webサイト、
ww.jccca.org
3)  USA TODAY、October 27-29, 2006
4)  BoomerSummitから

      
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